あらためて、スタジアムコンセプトはまとめると、
- ①旧広島市民球場跡地に建てる
- ②オープンなスタジアム
- ③広島&市民のための複合型スタジアム
- ④収容人数3万人オーバーで拡張可能なスタジアム
- ⑤Jリーグスタジアム検査要項を満たすスタジアム
- ⑥世界最高レベルの臨場感、一体感のあるスタジアム
- ⑦広島のシンボル、観光スポットとしてのスタジアム
自分で言うのもあれですが、コンセプトとしてはこれだけアピールできれば十分かなと思います。では、まずはざっくりとスタジアムの概要と外観、スタンドを紹介。(画像はクリックすると2倍くらいの大きさになって別ウィンドウで開けます。)
スタジアム概要と収容人数
上から見たスタジアム。スタンド名称は今回は東西南北でわけることにします。
東西北、3箇所のスタンドは2層式。1層目スタンドの傾斜角度は20度、2層目スタンドは35度です。南スタンドは一層式で、傾斜角度は35度です。
スタジアム内スタンドに配置する、座席に移動するための通路幅は1m。座席前の通路幅はほとんどは0.75mで座席幅は0.47m。座席ジオメトリーは狭すぎると不満の種になるし、広すぎるとスタジアムの収容人数が制限されるということでかなり迷ったところです。
スタジアム検査要項では「座席幅は0.45m以上であること」とあります。なのでこれは絶対に守らなくちゃいけない。で、スタジアム標準ではできれば0.47m以上が望ましいと。座席前の通路幅は明記はされてないけれど、しれっと図中に0.8mの寸法が記入されてます。
他のスタジアム事例を国内、海外問わず調べに調べまくったけれど、あんまりデータはありませんでした。調べた限りでは、座席幅のスタンダードは0.5mかなという印象です。
座席前通路幅はなかなか数値が見当たんなかったんだけれど、通路幅0.75mでスタジアムユニットを販売してるところがあった(PAKAR SEATING)ので、通路幅0.75mでも全く不可能ではないと判断して0.75mで設定しました。
stadiaworldというサイトにスタジアム施設を作ってる会社の紹介やニュースがずら~っとまとめられてるので見てみると結構おもしろいです。
自分が実際に行ったヨーロッパのスタジアムでのフィーリングとしては、ロンドンのエミレーツスタジアムははっきり言って狭いです。比較対象は日本のスタジアムの自分の頭に残ってるフィーリング。スタンドの位置にもよるんだろうけれど、スタンドやシートへの通路も狭いという設計でした。座席前通路幅はおそらく0.7mぐらいでは?という感じです。シート幅は普通に広かったです。たぶん0.5m。しかもクッション付き!
バルセロナのカンプノウもとりわけ座席が広いわけではないけれどエミレーツスタジアムほど狭い感じはししなかったです。たぶんカンプノウが座席前通路幅0.75mでは?という感じがします。
日本のスタジアムで、自分が行ったことがあるスタジアムはほとんどが0.8m以上という印象です。国立競技場はたぶん0.8m以下で、豊田スタジアムが他のスタジアムよりは少し狭めに感じて0.75~0.8mかな~と感じました。
ま、これは自分のフィーリングでしかないので、正確ではないです。
ということで、スタジアムの座席は基本は0.47m×0.75m。ただし、広い席じゃないとやだ!って人のことも考えて、東スタンドの2階席は0.5m×0.8mのシートにします。また、スタジアムにテラス席を多数付けたので、狭いのは嫌という人は、そこを利用してもらうということで。
あとは、狭い敷地でも収容人数を大きくできるようにスタジアム構造を工夫。これで、スタジアムの収容人数は最大34000人。試合運営でのいろんなことを考えると、試合の時の実最大収容人数は32000~33000人ぐらいだと思います。
スタジアム外観
次はスタジアムの外観。
東スタンドの外観。このスタンドにVIPルームや放送席を入れ、ビルとスタジアムが融合したような外観にしました。 東スタンドと南スタンドのコーナー外観。ここは建物はあるけれど、周りに比べて低くしたので外から紫色のスタンドが見えます。サンフレッチェのエンブレムや看板部はとりあえずの演出。やりたかっただけです(笑)
2階の屋上は人工芝の広場です。
南スタンドの外観。このあたりからつっこみどころ満載になってきます。 南スタンドと西スタンドのコーナー外観。ここは建物はまったくなしでちょっとした広場。外からはピッチも一部見えるのでただ見エリアとしても使えます。 西スタンドの外観。事情はあとで。いろいろ考えた結果の遊びです。 西スタンドと北スタンドのコーナー外観。ここもいろいろ考えた結果の遊びです。2階コンコースは子どものお遊び広場にしました。 北スタンドの外観。ここはスタンド外観の構造がよく見えるとこ。南側を除いては基本的に同じ構造です。これは同一の部品を利用することによって出てくるコスト削減のため。。。になるかな?建築業界ではそんな概念はないかな? 北スタンドと東スタンドのコーナー外観。これはビルみたいなもの。 次はスタジアム内部のスタンド。
スタンド
東スタンドです。真ん中ぐらいまでは普通のスタンド。真ん中から上はVIPルームや放送席、テラス席などなど。VIP席がある席を順光にするか逆光にするか迷ったんだけど、立地や周辺施設とも関連して逆光側にしました。本当は順光にするのがベストなのかな?いやいや、日光をビル部分のガラスに反射させて、芝生育成光として使うっていうアイディアです。
ま、それは夢物語的な話で、陽射しとスタンドの関係は今でも何が正解なの?って迷ってます。
東スタンドと南スタンドのコーナー。ここは大型ビジョンを設置。コーナー部分は1階席、2階席ともにスタンド上部から各シートに行く構造です。 南スタンド。熱狂的なサンフレッチェサポーターが陣取るこのスタンドは傾斜角35度で一層のスタンド。出入口も大きいのを2つ配置しただけで、スタンド中央を中心としてできるだけ多くのサポーターが密集して集まるという密集感を意識したスタンドです。シートでサンフレッチェ広島のアイデンティティである3本の矢も表現。 南スタンドと西スタンドのコーナー。今回はここにもスタンドを設置。ピッチを現状の地上0m地点より5m下に掘り下げたためにスタンドを設けました。ここはオープンなスタジアムというコンセプトのかなめの場所。 西スタンド。一番大きなスタンドで2階席の傾斜は35度。シートを使ったナイキマークはオールドトラッフォードにあるやつといっしょ。やってみたかっただけです! 西スタンドと北スタンドのコーナー。ここにも大型ビジョンを設置。南側にあるものより1.2倍大きいものです。大きさはてっとり早くデータがあった神戸ウィングスタジアムのものをそのままもってきました。 北スタンド。ここは西スタンドと構造も高さも全部一緒。ここにはシートで広島の平和の象徴でもある折り鶴を描く。市民球場跡地にスタジアムを建てるならではのものです。 北スタンドと東スタンドのコーナー。ここも特徴的なところで、ここにビルをもってきた分、スタジアム内部ではテラス席として使用できます。試合以外の日でもスタジアム景観を利用した憩のスペースとして利用します。
今回はテラス席を多数配置しました。東スタンドには中心部以外で2階分。北東コーナーは3階分。テラス席とすることで、ニーズにあわせていろんな観戦環境を作ることができます。例えば、パーティシートにしたり、上空からピッチを見るようなスカイボックスとしたり、普通に座席を配置してスタンドとしても利用できます。発想元はマツダスタジアムです。
あとは各スタンドからのピッチや対向スタンドの眺め。
屋根
今回は、スタンドの両端にはしごのようなブロックのような鉄骨の骨組みの柱をドーンと建てて、それぞれの柱からスタンドの上を通る横の柱をつなぐ構造にしました。 そして、スタンド上の横に長い柱からスタンドの前後に小さい骨組みをつける。これに板なり膜なりをはって屋根の完成。
小さい骨組みは多すぎたかも。。。
横の柱をスタンドの真ん中に通すってのがミソ。こうすることでスタジアムの全高を抑えることができます。 あとは、南と西スタンドの屋根板は日光を入れるために透明の板にします。
本当はウェンブリーのような可動式にするのが現存スタジアムではベストなんだろうけど、そこは初期コストを重視するのか、それとも維持費を重視するのか、かつ双方のバランスを見て、透明板か可動式かのどちらかにしなければいけないと思います。芝生育成用のライトも含めてです。
北スタンドの屋根には太陽電池を設置。エコスタジアムという役目も果たします。初期設置コストはかかるけれど、維持費回収には多少は役立つのではと思います。これは、例え初期コストがかかってもやるべき価値はあると思います。できればISS並で。。。いやそれは無理。
で、大型太陽電池郡は名づけて「中国電力GIGA SOLAR SYSTEM」。民間企業とのコラボレーションも大型施設には欠かせないし、自分が作ったスタジアムモデルのテーマでもあります。きっとそれが魅力的な空間につながるかと思います。
あと、屋根にもたせた機能としては、スタジアムの拡張に柔軟な構造、そして、スタジアム内に気流を作る構造にしました。詳しくはまた別項で。
観客の動線
スタジアム内での移動の大事な部分となるコンコース。南スタンド以外は構造的には一緒。一階部分は幅6m。スタンドを支える柱を大きめにして、その中に売店やトイレを組み込みます。
そして大きな柱の間には、ちょっとした空間と2階にあがる階段を配置。
階段の両脇がスタンド内に入るための通路。階段自体もスタンドを支える柱として使いました。そして階段の下にもトイレ。トイレ多すぎかな? 紫色の柱は2階のコンコースを支えるためのものです。
おもしろいのは階段で1階から2回にあがる途中に中間コンコースを作ったこと。 中間コンコースは階段部分は幅4mで階段の両端に入り口をつけて、完全なクローズドコンコースのように機能させます。
通路というよりひとつの部屋。冬の寒い時期なんか暖をとるためにクローズドになっている部分も必要だろうという配慮です。 試合日以外は多目的ルームとして機能します。
2階のコンコースも幅は6m。 1階と同じように階段横にちょっとした空間があって、スタンド内への入り口があります。
コンコース上にはスタンドを支える鉄骨があって、スタンドがスタジアムの建物から大きくせりだすようにしました。これが構造物の設置面積を減らしつつ、収容人数を多くするための重要な構造。
南スタンドのコンコースは幅は6~8m。プラス柱の横にスタンド下の広場があります。コンコースの途中に他のスタンドと同じように、トイレと売店を配置しています。
スタンドへの出入り口は幅10mのでっかい通路が2つ。出入り口の数を減らしたので大きくしました。
南スタンドは2階も作ってはいるけれど、スタジアムへの出入り口は配置せず、 試合の日、試合以外の日もここはレストハウス機能として設定しました。
東スタンドのコンコースはだいたい北、西スタンドと一緒。だけど、スタジアム中央部はメディア、スタッフ、VIPのアクセス用の階段やエレベーターを内部に設置。
東スタンドは屋上通路も設置して、北側には屋上庭園もあります。
照明
照明は特にこだわりなく東西スタンドの屋根先端に設置。屋根のちょっと後ろよりに配置したのは、真上からピッチを照らすのではなく、少し斜めからのほうがいいかな?と考えてのことです。
関係者用アクセスとスタジアム内部の車両アクセス
ここは地味に悩んだところ。まず車両アクセスは北スタンドと東スタンドのコーナー部分に配置。球場跡地周辺の道路や施設を考えてのことです。スタジアム内部の車両出入り口の脇には東スタンドへの人の出入り口もつけます。
そしてアクセス路は地下を通って、地上の道路に接続。ちょうど公園内道路の入り口があるところです。
球場跡地周りの地下には、すでに駐車場アクセス用の地下道路があって、そこと接続できればとも考えたけれど、バスも通るってことを考えると、現在ある地下道路はバスが通れるほど高さがあったかな?とわからなかったので、地下通路を新設しました。
地下通路を作った位置には、現在は基町クレドと接続する地下通路がありますが、そこは廃止。現状、地下通路で何もない部分が長すぎるし、利用している人も少ないためです。バスセンター下の道路のクレド側で地上と接続、もしくは中央図書館付近の地下通路と接続するのがいいのでは?と考えました。
南スタンド側にもメディア用のピッチレベルの出入り口を配置。
関係者用施設
選手やスタッフなどの関係者施設は東スタンドの地下一階部分(下図紫色の部分)。場所を決めてあるだけで部屋までは作ってません。
この施設へのアクセスはスタジアム内部への車両アクセス路を使って、その道路を東スタンドの南側まで伸ばします。 伸ばした先に関係者、VIP用の地下駐車場があります。 ロッカールームやウォーミングアップスペース、記者会見場、などなど、選手、メディア、スタッフ施設はスタンド地下の中央部付近(紫色のところ)です。
スタンド中央部の出入り口は選手や運営スタッフのピッチへの出入り口でその両脇にベンチ。 ベンチはスタンドと一体という形にこだわってるわけじゃないけれど、とりあえず今回はその形。もっとこだわりたいのはベンチの横に観客用スタンドがあるってことです。
その他
その他でJリーグのスタジアム検査要項で補足すると、衛星用中継車両の駐車スペース。検査要項には書かれていないけれど、どうせ南側の空が見渡せるような位置なんだろうからスタジアムの南側でとなると。。。
狭くはあるけれど、南スタンド側のシャレオ出入口付近に駐車してもらうということで大丈夫かと思います。広島市民球場時代にも実績はあるし。
それ以外はスタジアム構造としては、Jリーグ検査要項を満たしてるはず?
大まかなスタジアムの説明は以上です。次は各コンセプト実現のためにスタジアムに織り込んだ特徴を紹介します。
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